90年代の放送業界、わけても技術分野におられた方なら知らない人はいないであろう、SONY BVW-400A。当時のテレビ取材ENGのデファクトスタンダードカメラです。今回はこのレジェンド・カメラについて、あくまで表面上だけ・さらっと軽く語りたいと思います(笑)。
「業界標準」だったカメラ
なぜ「表面上だけ・さらっと軽く」語るのか。それは、当方は数回程度しか使ったことがないからです。というのも、90年代といえば当方まだ学生。業界デビューしていなかった頃です。当然、カメラの機種名も知らなければ性能や体感スペックも皆目分からない頃。なので、伝えきいたことだけの内容になります。
という状況にもかかわらず、なぜわざわざ独立コラムねたにまでしたのか。それは見てお分かりのとおり、ENGのあるべき姿、もっとも美しい形をしていると昔も今も感じさせるデザインだからです。
ファインダーの形
学生だった頃に私が見た400。まず驚いたのはファインダーの部分(笑)。被写体に向けてスイッチ・つまみが自信満々にむき出しになっている点。「なんと無骨で、なんと自信に満ちたデザインなんだろう」と驚いた記憶があります。
加えて防具のように装備されている「ワイヤー」。プロになった後も、実際これがいったい何の役に立っているのかは不明なままでしたが(笑)、これがあるだけでカッコよさは100万倍にもなることだけは(笑)見た瞬間に理解できました。
本体スイッチ
本体に目を向けてみますと、まずはスイッチ部に目がいきますね。この部分にもしびれたものです。ポータブルカメラなのに、まるでデスク上に配置されたかのようなスイッチデザイン。実際に扱う上でもブラインド操作しやすく、感動したものです。この部分はその後のHDCAM時代、さらに下部分に扉が配され、よりメカニカルに進化します。
側面デザイン
そして忘れてはいけないのが、側面のライン。下手をするとボテッとした形になっても不思議のないENGカメラですが、まるで流線型のような、もっといえばピストルのような先鋭的・かつ直線的な流れのデザイン。このスマートで細く見えるボディの中に、あのベータのメカデッキが収まっているとは到底思えません。
さらに極めつけはCCUプラグ。まるでレーシングカーのマフラーのように後ろに跳ね上がる形。ここまでくると、もはや工業デザインではなく「芸術品」とでも呼びたくなる完成度です。
内部回路
さらに忘れてはいけないのが中身。ボディを開けると、まるで引き出しのように連番になった縦長の基盤ボックスが並んでいるのです。とことん効率を重視して設計されていたのが分かります。
ENGの「標準」を作り上げた名機
以上、ちょっと思い入れ過多に語ってしまいましたが、これは決して行き過ぎた論調ではないと思います。というのも、上記のいづれの機構も、その後のENGカメラのデファクトスタンダードとなっているからです。
それはSONYのみならず、ライバルであるパナソニック、従続であるJVCにも通じています。
つまり、現在のENGのハード的スタイルの礎(いしずえ)を築いたのがBVW-400Aだったわけです。そしてその後も含めてENGの世界を形作った名機は、形も含めて美しいというか、カッコいいと今でも思わせます。
ということで、まさにENGの伝説的カメラ・それがこのEVW-400Aだったと思います。