映画 「陽はまた昇る」

今回は映画のお話です。「陽はまた昇る」という邦画。かの日本ビクターにおける、VHS開発の成功・一部始終を描いた作品です。

思えば意外と古い映画で、確か2000年か2001年の公開だったような気がします。ビデオマニアにとっては外すことの出来ないこの作品。さっそくご紹介しましょう。

日本ビクター物語

VHSの開発を語る上では、その前規格である「Uマチック」抜きには語れないでしょう。ということで作品冒頭でもUマチックを抱えて「なんて重くて不便なんだ」みたいなシーンが出てきます。

そしてどうしても映画ですので、演出の部分や、絵的な理由で美化されるシーンもあちこちにありますが、それはまぁ仕方ないことだと思います(Sony、松下に勤める人を当時若手の美形俳優を配することで、華やかで太刀打ちしづらい相手だったという風に描いている・同時にJVCが「古き佳き」存在として崇められているシーンもある)。

この映画のポイントは、主役に某喜劇系の人気役者を配し、脇に実力派でしかも人気もある俳優を添えた点と思います。こうしたキャスティングからも、映画をめぐる制作者の意図が何となく感じられます。

サラリーマンの黄金時代・昭和

映画の感想ですが、まず何より「日本ビクターってここまで町工場的なカンジだったの?」ということ。もし事実だとしたら、(いい意味で)すごく親近感が湧きます。なので自分がもし当時も少し勉強ができて、も少し見栄えのする学歴を持っていたなら、この会社に入りたい!と思ったはずです(笑)。

そしてこの映画は「サラリーマン物語」そのものなんだなぁ、ということ。この作品に描かれているような仕事の上でのちょっとした山や谷は、実はどんなサラリーマンの人生にも見受けられること。もちろん本作品のテーマは、その後世界規模で展開する巨大事業の根幹のお話なので、こうして映画にもしてもらえます。しかし同時に、当時の日本の会社員の誰にでもあてはまりそうな「あるある」エピソードでもある。ここもまた親近感が湧く大きなポイントになっています。

改めて再見しカンドーしてしまった

当方が最初に見たときは、まだ当方20代。なので「東名高速のシーンが合成モロバレ」だとか、「なんでこの主人公にこんな美人の奥さんがいるんだ」とか、「なんで主人公はこんな豪邸に住んでいるんだ」とか、「なんでVHSの画質チェックしているところに現行のソニーPVMが置いてあるんだ」とか、若人らしいいちゃもんをあれこれ内心思ったものです(笑)。

しかし今見てみると、本当に全てのカットが丁寧に作られていて、しかもディテイルにも凝っている。いい映画なんだなぁと改めてカンドーしてしまった次第です。いい作品だったなぁ!

せっかくなのでこの逆の立場の映画も見てみたいですよね。パロディでもいいので。Beta側から見た、映画「陽はまた沈む」とか(笑)。うちが遊びで作っちゃおうかな(笑)。

まぁ栄光のソニーにしてみたら当時はバブルでもあったし、そもそもBetaはその後ベーカムとして大成功し、結局HDCAMとしてVHSよりも長く生産を続けることになったわけで。その意味では「陽はまた沈む」というような斜陽な感じはまったくなかったので、そぐわしくはないかもしれませんが(笑)。大体、VHSメカデッキの中にBetaの特許もいろいろ入っていますしね。

それからこの作品もうひとつの特筆点は、脇役の名俳優の演技のうまさ! 私生活ではその奔放ぶりがやたら話題になるお方ですが(笑)、映画では完全に役になりきっていて感心しきりです。ものすごく上手です!

まぁこれは実は、主役の人との演技の落差でもある。なんてこと添えると「余計なこと書くな!」と突っ込まれるでしょうけど(笑)。

あと、VHS物語で有名なのはご存知・NHKスペシャル「プロジェクトX ~VHS・窓際族が世界規格を作った~」ですよね。これについても、気が向いたらご報告したいと思います。