今回は音声のお話です。番組のロケでは出演者にピンマイクをつけてもらうのが定例で、ピンマイクからカメラへ無線伝送され、素材収録されます。ただ無線を使用する以上、混信があるのかないのかはたまに話題になります。今回はそんなお話です。
現場でよく使われる帯域
ロケの現場では、A帯、B帯、デジタル帯などいろいろ使われます。最も汎用性が高いのはB帯と思われます。理由は無免許で使えるから。A帯は一応、陸上無線免許が必要です。そしてA帯は混信も少なく、また機材も高価なものが多いです。
そうした事情もあり、昨今の番組予算抑制の流れもくみつつ、最近ではB帯の使用頻度が非常に高いです。機材もそんなに高価でないし、品質も問題ない。さらにパッケージがコンパクトで、デジなどの小型ロケでも自然に使用できる。メリットの多いシステムです。
混信の可能性はあるので要注意
ただ気になるのは、アナログの電波だけに混信するかどうかの点。結論から言うと、混信というか障害が発生する場合はまれにあります。この辺が少しやっかいですね。
当方の経験では、たとえばバス会社のロケで一度かなり強烈な混信がありました。ご承知のとおりバス会社はバス無線を使用しており、これが混信したものと思われます。
その他では、報道発表の会場など。こうした会場では基本ワイヤレス使用は絶対禁止です。自社の収録に障害が出るだけならまだしも、会場電波に混信したらイベント破壊につながりかねない。そうなると下手すれば巨額賠償の対象にすらなりかねません。
そして気をつけなければいけないのが、実は「学校周辺」。学校では平気でいろんな無線マイクが使われており、これに混信したら大変なことになります。
当方が聞いた中では、あるロケが学校至近の公園で行われた際。タイミング悪くその時学校で運動会が開かれており、運悪く校庭マイクとピンマイクチャンネルが合致してしまった。これにより、収録のマイク音が運動会にずっとダダ流れしていたという話(本当に実話です)。恐ろしいことです。ぜひお気をつけくださいませ。
そういった事情があるので、基本的には「イベント会場付近」では無線は使いません。どうしても致し方ない場合は、ブルートゥース(BT)を使用します。BTは、基本的にはペアリングしたもの同士の「通信」となりますので、原理的には混信は発生しません。
ある種の「アイデア商品」・BT
件のBTですが、意外と便利です。本当に非常用機材そのものなんですが、意外と使える。「上手に活用すれば」音質的にも問題ないですし、たいへん小型軽量なのもグッド。
外部マイク入力があり、ありがたいことにプラグインパワー。対応マイクを接続することで、さまざまな応用収録が可能になります。受信機側はミニジャック出力。抵抗ケーブル使用が前提の設計です。ここが大きなポイント。抵抗ケーブルを使う、ということは、それだけ出力レベルが高いということ。いろいろと活用できる源泉となります。本体には受信レベル調整ボタンもあり、ますます有用です。
唯一の欠点は、電池が4時間から5時間しか持たないこと(ニッケル水素充電池使用の場合)。なので、記録ものではうっかり電池切れさせてしまうことがあるので要注意です。とはいえ、以前はUHFしか選択肢がなかったことを考えれば、なかなか便利なアイテムといいえます。