今回は「美形カメラ」テーマの第二弾(笑)。Sony DSR-130について書きたいと思います。
このカメラが登場したのは1995年。思ったよりかなり前のモデルであることに驚かされます。Sony伝統のDXC・ドッカブルカメラシリーズのまさに本流・ヒット作であるDSR-130。さっそく見ていきましょう。
ドッカブルDXCの大ヒットモデル
DSR-130はドッカブルタイプのENGカメラ。ドッカブルとはつまり、ドック(合体)+エーブル(できる)という意味。DXC-D30というカメラヘッドと、DSR-1というポータブルデッキを合体することでDSR-130という商品が構成されています。
カメラヘッドは、公称F11を誇るPower-HAD CCDを搭載した2/3マウント。デッキ部はDVCAM。ただしDV記録はできません。さらにi.LINK端子も非搭載。あくまで現場での記録撮りに徹するという思想なのでしょう。登場が1995年ということは、開発時期はバブル絶頂期か佳境を過ぎたあたり。ノンリニアはまだ現実的なツールとして普及していない段階。そうした事情もあり、1394非搭載になったのかもしれません。
登場時期的に、4対3アスペクトのSD仕様。キャラクター(メニュー表示)も全時代的なカクカクした文字をあえて採用しており、このあたりが古い時代性を今に伝えています。
製品のカテゴリーとしては、放送用ではなくあくまで業務用。それゆえ、ビジネス系のプロダクションに売り込むのが主目的だったようですが、当方の知る限り(というか当方が所属していた)、某放送系のプロダクションでも使用されていました。
2/3インチB4マウントで、DVCAM記録。意外にも保守的な業界ゆえ、ベーカムから即乗り換えられたわけでもなく、次第次第に普及していったイメージがあります。とはいえ、スペック的にはまさに保守本流といって差し支えないパッケージ。どこから見ても安定性のある製品だったと思います。
ENGのベストデザイン
当方が特に印象に残っているのは、やはりこのカタチ。本当に惚れ惚れするほどのカッコよさだと当時感動したものです(今もですが)。
実は当時のベストデザインカメラは、以前にも書きましたが文句なしにBVW-400A。ベーカムの事実上の業界デファクトスタンダードカメラ。400Aの存在があったため、これを凌駕するカッコイイカメラはもう出てこないだろうな、と思っていた矢先の本モデル。
ソニーデザインがある種の到達点を迎えた成果とすらいえる完成度だと思いました。四の五の言っても仕方ないので、これはもう写真を見てもらうしかないですよね。
ちなみに本カメラは、当方が趣味で7年ほど前にヤフオク落札した商品。当時でナント、たったの8万7000円でした。しかもインナーフォーカスのレンズが装着された上で、です。
やはりいくらデザインがよくても、SD仕様では現場の機材としては現代では使えないからでしょう。そう考えると、もう本当に何とか「DVCAMのHDV改造サービス」が出てこないかなと切に願いたいところ。でもまぁそんなものは出てこないでしょう(笑)。
なので、このDSR-130も当社の機材室で、金字塔カメラの扱いで、オブジェとしての役割を果たしながら静かな余生を送っています。
余談ですが、DSR-130はさまざまな映画で小道具として登場します。有名なところでは「007・トゥモロー・ネバー・ダイ」で、テロリストが被害者を撮影する海のシーンで登場しています。