唯一転売してしまったカメラ。

当方は技術系の制作プロダクションで、機材をたくさん保有しています。しかも、基本的に一度入手したものは転売などしない方針。理由は「どんな機材も、いつどこで役に立つか分からない」から。しかし。そんなスタンスを貫きながらも、実はいくつか転売あるいは処分してしまったものもあります。今回はそのお話です。

キヤノン XL-H1

キヤノンのかつてのフラッグシップだったハイビジョンカメラ。民生とも業務用ともつかない独特の形状で、まさに「異型」といっていいスタイルが印象的なモデルです。

実はこのXL。当社ではその源流ともいえるカメラを、ずいぶん前に保有し活用していました。それが「XL-1S」。某機材評論家の方からお預かりした、というかいただいたカメラ(笑)。
当時の当方はまだまだ駆け出しで、機材を買うお金にすら困窮していた時代。なので、好き嫌いなど言っている場合ではなく、いやおうなしに使っていました。

ものすごく使いにくい

その当時からすでに気づいてはいましたが、正直…非常に使いにくいカメラでしたね。ショルダーともハンディともいえない中途半端な形の上、ビデオカメラを作り慣れていなかった当時のキヤノンの「ぎこちなさ」が色濃く反映された製品だったからです。

その象徴が「回転式モードダイヤル」。これはもう完全にスチルカメラの感覚。ビデオでこんな機能を使う人は、ましてこのクラスを検討する層にはいるはずもありません。シャッター優先とか絞り優先とか、写真撮るわけじゃないんだから。

で、そうした癖というか呪縛はごく最近になるまで解かれませんでした。このXL-H1も同様。その意味では、何となく豪華なガワでありながら、単にでかくて重くてしかもバランスが悪いだけのカメラ。それが現場からのまっとうな評価だったと思います。

ちなみにこのXL-H1は、譲り受けた訳ではなく自ら購入したもの。というのも、当時はまだまだ「見栄えのする」HDカメラは高嶺の花で、とても手が出なかったからです。それに以前のXLでこのスタイルに良くも悪くも使い慣れていて、しかもアクセサリーも流用できるということで手を出したのです。

しかし…やっぱりダメなものはダメだった(笑)。上記の弱点はもちろんですが、まるで広角がとれないレンズは致命傷だった。広角側が35mm換算で40mmを超えるような数値ですから、ワイコンつけたとしても普通の撮影ですらかなり厳しい。

かといってワイコンをつけると、もう大の大人の手がしびれるほどの重さになってしまう。しかもその重さが肩にくれば問題ないんですが、何しろこの異型デザイン。「手にのしかかるしかない」わけです。

さらに。ファインダーとレンズが分離できるので、小さくまとめて可搬性を上げられるかといえばまったくそうなっていない。

グリップが据付なもんだから、巨大なつづらでもない限りハコに入れることができないのです。つまり、遠征ロケなどにはまったく使えない。それを認識したときにはっきり悟りました「このカメラはダメだ」。

というわけで、このH1は転売してしまいました。残念ですが仕方ありません。当社が唯一転売してしまったカメラ・それがXL-H1です。